HHKB Professional HYBRID Type-S 雪の定常販売、HHKB 発売 25 + 1 周年 HHKB が選ばれ続ける理由、HHKB の周辺アイテムの話
この記事は、信じがたいと思いますが キーボード #1 Advent Calendar 2021 の 20 日目の記事です。
19 日目はせきごんさんの 2021年の振り返りとRP2040(RPi Pico)を使って分割キーボードの通信をUSBにする話 でした。
21 日目は Yoichiro さんの Remapがファームウェア書き込みでやってること です。
2021 年 12 月は HHKB 発売 25 周年であり、それにちなんだ記事を書く予定でした。「HHKB Professional HYBRID Type-S 雪」モデルもそんな 25 周年記念の限定モデルでしたが、この度この雪モデルが常設販売される運びになりましたので、昨年唯一 キーボード #1 Advent Calendar 2021 に穴を開けてしまった記事をこの機に乗じて上梓しようという魂胆です。あとつい癖でメディア向けの文体になってしまったけど特に理由はないです。
装いも新たになった「HHKB Professional HYBRID Type-S 雪」定常販売モデル
そもそも「雪」モデルとは
HHKB は昨年 2021 年 12 月に発売 25 周年を迎えた。その際に 25 周年限定カラーとして企画・販売されたのが「HHKB Professional HYBRID Type-S 雪」モデルだ。名前の通り純白のモデルで、既存の「墨」「白」のカラーバリエーションではあるものの通常モデルで本体左肩および右肩に与えられていた「HHKB Professional HYBRID」「Type-S」の刻印を取り除くなど思い切った限定仕様となっていた。
25 周年にちなんで 2500 台数量限定 (英語配列・日本語配列各 1250 台) の販売であったが、一瞬で完売し再販の希望が継続的に寄せられていた。
そしてつい先日、2022 年 10 月 25 日より晴れて「HHKB Professional HYBRID Type-S 雪」モデルが定常販売のラインナップに仲間入りした。しかし単なる再販ではなく「雪」モデルにあわせたアップデートが施されての再登場となっている。
「雪」モデル定常販売版は限定版から何が変わったのか
最大の変更点はキーキャップの刻印で、既存モデルのものから刷新されている。刻印がキー中央に移動となったほか、より細め・小さめのフォントを採用している。
25 周年記念限定モデルでは「墨」「白」と同様の刻印が行われていたが、純白の「雪」モデルに対しては少しコントラストが強すぎるという指摘は HHKB エヴァンジェリストからも当初より出ていたようである。実際私も限定版に関しては即座に無刻印キーキャップに換装してしまっていたので、無意識下でも多少の違和感は感じていたところがあるかもしれない。
HHKB のメーカーである PFU はこの点を受け止めて今回の新刻印の採用に踏み切ったようだ。フォントが細くなったことで刻印の主張が適度に抑えられ、「中央印字デザイン」によって「雪」カラーに見合ったモダンな雰囲気に調整されている。
また、今回追加された「雪」の定常販売モデルは「英語配列 / 日本語配列」と「刻印あり / 無刻印」の組み合わせによる全部で 4 つのバリエーションからなっており、その中でも「刻印あり」モデルでは本体上部の「HHKB Professional HYBRID」「Type-S」の刻印が復活している。無刻印モデルに関しては限定版同様本体の刻印はなしとなっている。
「刻印あり / 無刻印」それぞれの 交換用キートップセット も同時に販売されるため「本体に HHKB の刻印はほしいけどキーキャップは無刻印にしたい」「本体の刻印はいらないけどキーキャップの刻印はほしい」というニーズにも対応できるようになっている。
HHKB が選ばれ続ける理由
冒頭でも説明したとおり、HHKB は 2021 年に販売 25 周年を迎えた。これだけの長い期間選ばれ続けているだけでなく、最近ではより販売に勢いがついているほどだという。その人気の理由とはなんだろうか?
最近の HHKB のイメージといえば、静電容量無接点スイッチによるなめらかな打鍵感という人も多いのではないかと思う。実際東プレ製静電容量無接点スイッチを採用した HHKB には「一度使ったらこの打鍵感から離れられない」という熱心なファンが数多くいるのは有名な話だ。HHKB は「Type-S」スイッチで打鍵感にさらなる磨きをかけており、上質なタイピング体験の向上に余念がない。実際「HHKB Professional HYBRID Type-S」のスイッチは既存の「HHKB Professional Type-S」スイッチと比べてもさらなる精度向上によって明らかに打鍵のスムーズさが向上している。
しかし実は HHKB によって静電容量無接点スイッチは必ずしも本質ではない。1996 年、HHKB の最初のモデル KB01/02 はいわゆる普通のキーボード、メンブレンスイッチを採用したモデルとなっていた。現在の HHKB に近い静電容量無接点スイッチのモデルが登場したのは実に 2003 年になってからのことである。
発売当初の HHKB、当時は Happy Hacking Keyboard (HHK) の設計の原点となったのは東大名誉教授の和田英一先生の Aleph キーボードである。
1990 年代当時はマシンもキーボードも規格や製品が乱立・多様化しており、マシンが変わればキーボードも変わってしまうほか多様化するマシンに合わせてキーの種類が肥大化するなど、和田先生のような熟達したプロユーザーほど使いづらい状況であったという。
そういった状況で Aleph キーボード / HHK に求められたのは、プロがどの端末に接続しても使いやすいポータブルなキーボードであるということであった。そのために生まれたのが 25 年の時を超えて現在の HHKB にも引き継がれているキーレイアウトであり、「60% キーボード」として今なお多くのキーボードのリファレンスになっている。HHKB の本質は打鍵体験のよさはもちろんのこと、プロにとって使いやすく持ち運びやすいキーレイアウトであるということだ。いわゆる「馬の鞍」 である。
このような HHKB の設計思想は古びれるどころか、むしろより価値を増している。様々な場所で自由に仕事ができるようになり多くの人が当然のように複数の端末を持つようになった現在、HHKB のコンパクトな設計は持ち運びしやすく、どの端末でも共通の操作ができる「馬の鞍」として確固としたポジションを築いている。25 年前の先見の明が今も HHKB が選ばれる理由となっているのだ。
周辺アイテム
HHKB の見逃せないポイントとして、それ自体が周辺機器であるキーボードであるにも関わらず周辺アイテムが非常に豊富であることが挙げられる。ここでは HHKB を更に快適に使える周辺アイテムを簡単に紹介したい。
HHKBキーボードルーフ
HHKB ロゴ入りのほこり・汚れよけのプラスチックカバー。誤操作防止にもなる。クリアケースなのでキーボードが見れるのもいい。
ケーブルKEEPER
正確には HHKB 周辺アイテムではないが、デスクのケーブルの整理に。ラップトップなど持ち出すマシンのケーブルを固定しておけて便利。持ち出したマシンをスタンドにセットして「ケーブルKEEPER」からケーブルを接続して「HHKB Professional HYBRID Type-S 雪」を BLE で接続して、という運用をしている。
セパレート型ウッドパームレスト(ウォールナット)
HHKB ロゴ付きの分割型パームレスト。ゴム脚の高さが 2 種類選べる。分割型なので尊師スタイルでトラックパッドを避けて配置することもできる。木の手触りがいい。
HHKB吸振マットHG(Professional HYBRIDシリーズ用(Type-S、Classic含む))
HHKB の裏面に貼ってクッション性とグリップを高めるパーツ。グリップ性がめちゃくちゃに高まるほか、打鍵時の音も少し静かになる。「HHKB Professional HYBRID」/「HYBRID Type-S」は静音モデルとはいえそれなりに音がするので手軽に静音化するにはおすすめ。
キーボードブリッジ
尊師スタイルで HHKB を使うためのオプション。13 / 15 インチクラスのサイズのノートパソコンという名の Macbook Pro 等で利用できる。HHKB は Macbook Pro でそのままでもギリギリ尊師スタイルで使うことができるがこのキーボードブリッジを使うと確実に HHKB を配置できる。トラックパッドもきれいに避けてくれていて使い勝手は良好。
というわけで「HHKB Professional HYBRID Type-S 雪」定常販売モデルと HHKB の魅力、HHKB 周辺アイテムの紹介をしました。カスタムキーボード・自作キーボードはもちろんいいけれど、やっぱりコンパクトなキーボードの先駆けとなった HHKB はいいですね。
この記事は HHKB Professional HYBRID Type-S 雪 (定常販売モデル) で書きました。